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「有明海に生きて 
100人に聞く海と漁の歴史と証言」

 
今回の企画は、前作「今、有明海は・・消え行く漁撈習俗の記録(2006)」の制作過程で生まれました。撮影中に出会った、戦前から漁業や干潟漁に携わってきた古老たち。その体験談は大変興味深く、戦後60年間に有明海から消えた伝統漁法・干潟漁が十種類近くに及ぶという現状の中、今後どのように海を再生させ賢明に利用していくかのヒントになるかもしれない、と直感しました。

映画は、2006年春から1年間かけて沿岸4県(福岡、熊本、佐賀、長崎)の地先を巡り、有明海と関係の深い様々な業種・世代の人々を対象にした100人以上の取材で構成されています。
(有明海ではかつてよく見られた)半農半漁で暮らしを立ててきた人たち、週末に浜遊びを楽しむ沿岸住民、原始的な伝統漁法(くも手網、甲手待ち網、スクイ等)を今なお守り続けている漁師、有明海の魚で行商を続ける80歳代の女性、宝の海のおかげで財を成した経験を持つ漁師達・・・。
そこには、海と密接な繋がりを持ったそれぞれの個人史がありました。そしてその前途は、海そのもののあり方に大きく左右されてしまう危うさも持ち合わせているのです。

内海であるこの有明海は、陸上の人的活動の影響を直に受け、環境が悪化し、生産性も極度に低下してきています。漁師のみならず、造船所や鮮魚運搬船業、漁網販売店、魚市場、鮮魚店など関連産業・商店に携わる人々の心の中にも、深い閉塞感がつのっています。「企業努力だけじゃどうにもならない・・・。」
一方で、ある漁師の妻は漁の近代化で乱獲が進んだ事実を淡々と語ります。「獲りあげてしまうとですね。やっぱり海の汚染ばかりでもなかとですよ。」
「状態の悪か時には、やっぱり涙のずっよ。ここまで追い込まれたとはやっぱり、自分たち漁業者の知識の足らんやったとやろな・・・。」と自らを省みる漁師は、諫早湾干拓着工前後で水揚げが10分の1近く減りました。「責任転嫁するのではなく、お互い修正できるものは修正していかに共生していくかを考えなければ。」漁師として生きる覚悟をした漁業後継者はこう語ります。

先祖代々からの延縄漁を生業としてきた古老。「自分が船に乗っていなければ延縄は仕事にならない。」と、85歳を過ぎた今も自負しています。親父から叩き込まれた知恵と長年の経験から生み出される漁師の勘。  
人は、自然の一部として身をつつしみながら生きてきた時代がありました。その先人たちの声は、自然への畏れが薄れ行く今の時代だからこそ、人々の心に深く響くのかもしれません。

取材をして我々がよく耳にしたのは、有明海の異変を嘆く声と共に、「それでもやはりこの海が好きだ。」という愛着の念でした。
沿岸の人達は今、様々なジレンマを抱えながらも、活路を開こうと懸命に生きているのです。
                               脚本  大仁田典子

 
   
 

 

 
 
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